ご存知ですか? 夫婦財産契約のことを。
1.夫婦財産制
夫婦財産制には、①法定夫婦財産制に関する制度と②夫婦財産契約があります。
① 法定財産制
日本民法755条は、「夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は次の款に定めるところによる」とし、夫婦は、婚姻前に契約(夫婦財産契約)を締結して自分たちの財産関係を自ら規律することができるとしています。しかし、これを行わなかった場合には、法定の制度が適用されるとしています。夫婦財産契約の内容について民法は特に制限を加えていませんが、夫婦の平等や婚姻の本質に反するような契約は無効といわれています。
② 夫婦財産契約
夫婦財産契約は婚姻届出前に締結して、その旨登記しておかなければならず(民法756条)、しかも婚姻届出の後は原則として変更することができないため(民法758条)、結婚してみてこうした方がよいと思う場合に財産契約の締結や変更ができないという制度上の欠陥があり、実際に夫婦財産契約を締結して登記した実例は非常に少ないようです。(全国で、平成26年は10件、平成25年は12件、平成24年は10件)
2.契約財産制の選択が必要となる場合の例
①婚姻費用の負担の定め
法定財産制度において、婚姻費用は「夫婦は、その資産・収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」とされています。
別居をした場合に、一方の配偶者から婚姻費用を支払うよう調停の申し立てがされることがありますが、夫婦財産契約において婚姻費用の定めをしておくことにより契約に応じた婚姻費用を支払うことで足りることになります。
また、逆に契約に定めた婚姻費用の支払いをしないときは、契約に基づいた支払いを求めることもできることになります。
②財産分与に関する紛争の未然防止
民法第762条第2項が「夫婦のいずれかに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する」としていることから、夫婦でいた間に築いた財産で、夫婦のどちらのものか明らかでない財産は共有と推定されます。
この条文により離婚の際、財産分与で問題となることがあります。
また、「婚姻中に一方の配偶者が相続や贈与によって取得した財産は、原則として特別共有」ですが、その獲得や維持について配偶者の協力があった場合や便宜上一方の配偶者の名義とした場合に問題が生じます。
夫婦でいる間に取得した財産についての帰属者を定めておくことによって、共有と推定されることがなくなり、上記のような問題の発生を防止することができます。
③日本国の国籍以外の国籍の者と婚姻する場合
日本国の国籍以外の国籍の者と婚姻しようとする(国際結婚の)場合、日本国の民法に則り夫婦財産契約することによって、日本の契約財産制が適用されます。
こうすることにより、日本国以外の国の夫婦財産制度についての調査が不要になります。
④配偶者が死亡した場合の居住所の確保
子供がいない場合やその夫婦間の子供でない者がいる場合、遺産相続の問題が発生することがあります。夫に婚歴があり、前妻との間に子がいる場合などがそれに当たります。親権が前妻側にあったとしても法定相続分の権利は、見も知らぬ前妻の子にあるのです。
このとき相続による紛争が発生した場合、住んでいる家を明け渡さなければならなくなる可能性も出てきます。
夫婦財産契約において、不動産を所有する一方の配偶者が死亡した場合でも、他方の配偶者の居住を認める旨の契約をしておくことによって、夫婦の継承人(この場合、前妻の子)にも対抗することができます。
3.契約財産制を選択するためには
①婚姻の届け出をする前に、夫婦となるもので契約を締結すること
公正証書で契約をする必要はありませんが、契約の締結日が要件であることから、契約締結日が明らかになるような措置(確定日付の取得)をしておくことをお勧めします。
②婚姻の届け出をする前に、夫婦財産契約の登記をすること
契約を登記することで、夫婦の継承人(相続人など)及び第三者に契約の内容を主張することができ、裁判においても契約の内容を主張することができます。ただし、登記が婚姻届出の後であった場合はこの効果はなくなってしまします。
4.夫婦財産契約の問題点
離婚するか一方の配偶者が死亡するまで契約の効力が続きます。夫婦財産契約は、変更することができないのです。
5.所感
婚歴があってどちらかに子供がいる場合、夫婦間に子がおらず兄弟がいる場合、国際結婚をする場合には夫婦財産契約を検討してみてはいかがでしょうか。
変更ができない点で二の足を踏まれる方は、せめて婚前契約について話し合ってみることをお勧めします。
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